wood craft
天板や脚などに使用する木材は、なるべくその木材の歴史が分かるものを使用するよう心がけております。地方の木工所へ行けば、それはそれはすばらしい板が売っておりますが、今のところ食指が動きません。
製作にあたり
どれほど癖のある木材であっても、例えば自分でチェーンソーを使い伐採してきたものには愛着が湧きますし、渓流や傾斜地からの搬出で手こずった木は、いつまでも記憶に残っているもの。カミキリの幼虫に穿孔された白た部分は通常切断されますが、この味わいある穿孔模様は想像力をかき立てます。毎日使用するものであればこそ、想い出のつまった木と戯れたい。
事務机
天板は群馬県産のケヤキで3方向に枝が伸びていた部分を使用。枝分かれしてスリットになっている所から携帯電話とIPADの充電用コードを出して充電したり、右腕を置く部分がマウス操作しやすいよう枝の膨らみを残しておくなど遊び心満載に設計。奥行きがあるため、相続・譲渡の財産評価関係の仕事をするときには、非常に重宝します。
脚は鉄製アングルを溶接仕上げして頂き、引き出しが付いております。脚の周りは鉄板で囲い、ナラ木目調の鉄板用クロスを貼り付けました。鉄板のためコード類を磁石で固定できることから足元はとてもスッキリしています。
このケヤキは20世紀の時代に標高1,000m程の所にある畑に生育していたもので、地主の方から高圧線に枝が引っかかりそうだから伐採してほしいとの依頼があり伐採したものです。胸高直径1m以上もあるケヤキで上に伸びず横に枝が広がっていたため、高圧線に引っかけないよう中抜きしたりして慎重にチェーンソーを扱ったことを記憶しております。ちなみにこの天板は枝部分で木に登った状態で切り落としました(本来危険なため、やってはいけない手法)。17年乾燥させておりますが、厚さ35mmに製材したことと二叉に別れた部分があるため暴れやすいことから大工さんに接合をお願いしました。ネットで購入した国外の2液性エポキシ接着剤とボルトで2枚の板を固定。
デザインと設計は私が考えましたが、実際に行った作業は天板の研磨と面取り、塗装だけです。作ったうちに入らないかも知れませんね。せいぜい、大きくえぐれて欠損した部分をチェーンソーで曲面仕上げにしたくらいです。脚やクロス貼りの設計・製作に当たっては関与先の会社にご協力頂きました。
会議室テーブル
天板は千葉県産のケヤキ、脚は鉄製角パイプを溶接して作成。
ケヤキは関与先の方から新事務所移転のお祝いで頂きました。関与先のご自宅に生育していたもので、十数メートル以上一直線に伸びている非常に優秀なケヤキでして、それが何本もあり訪問する度に「凄いケヤキですね〜」と社長と語らいながら空を仰いでいたものです(言い続けていたから頂けたというのもあるかも)。
その後、ご自宅を新築することになり柱などに使用するとういうことで伐採されましたが、写真のものは芯に近いもので使われず保管されていたそう。
プロだとこの大きさで心材に近く節も多い部分は白たを含め切断を勧めますが、私のような素人はどうしても残して欲しいと考えてしまう。製材所や大工の方と話し合いの末、写真の形に治まりましたが、一度目は接合部分に隙間が生じ修正を余儀なくされました。やはり50mmの薄さでは巨大なこの板を制御することは厳しいのでしょう。それでも大工さんが技術でカバーして下さいました。私がした作業は研磨、穴のパテ埋め、面取り、塗装のみで、事務机同様、まともなことはしておりません。ただ、研磨は事務所内のためベルトサンダーを使えず手作業だったため、仕事が終わった後に1人で紙ヤスリを使って何日も磨いているのが苦痛でした・・・。
さて、この重量級ケヤキテーブルを支える脚ですが、これも悩みました。木にするとペンションか居酒屋風になってしまう。歪みが生じることが明らかであったことと会議室としていかにケヤキの主張を抑えるかを考え、最終的には関与先の鉄工所の方と話し合いの末、角パイプにて脚を製作することに決定しました。脚の色も窓枠の色と同色にしております。写真には写っておりませんが、力業でケヤキの歪みを押さえるよう、ケヤキ裏面との接合部分を特殊な形にして硬質木材用ビスにてガッチリ固定しております。塗装もニスやウレタンがいいのかもしれませんが、木の温もりが感じられないことから割れや歪みもメンテナンスでカバーすることにしてオイルフィニッシュとしました。ワックスは水の跡が付きやすいため却下。多分、これほどの大物を今後製作することはないでしょう。
テーブル
天板は群馬県産のトチノキ。脚は以前使用していた丸テーブルの脚を再利用。
20世紀のとある日に猛烈な台風がやってきまして、当時私が住んでいた村は土砂崩れで道路が封鎖され孤立状態。土石流の恐ろしさを目の当たりにしたのもこの時。町へ出られないため山奥へ行くと、河原の中州に巨木が流れ落ちているではありませんか。ひたすら水量が治まる日を待ち、車で中州まで行ける流量に減ったところで仲間とチェーンソーで輪切りにして持ち帰ったのがこのトチノキ。砂を噛んでいたためチェーンソーの刃が欠けたりと大変でした。また、中州まで突っ走ったパジェロは微妙に流され、タイヤハウスの半分以上が水に浸かったためかブレーキの効きが悪くなる始末。余談ですが、20代の頃住んでいた所に台風が直撃し、田んぼから溢れかえった水の流れる道路を車で横断しようとしたら、1m程流され田んぼに落ちそうになったことがあります。その後、お決まりのように電気系やブレーキがおかしくなりました。現在は過去の経験を真摯に受け止め、4WDであっても水辺に近寄ることはしておりません。
さて、このトチノキですが、以前は自宅のちゃぶ台として使用しておりまして、星一徹でもひっくり返せないほど重すぎて使用に耐えられなかったため、屋外へ撤去。野ざらし状態が長らく続いたためか、雨の痕がついていて哀愁を帯びております。
ラック
天板はケヤキ、脚はクロマツ、中下段の棚はスギ。初めてルーターを使用してホゾ穴をあけてはめ込み式にしてみました(天板と脚はステンのアングルとビスで固定)。
ケヤキは事務机と同じ群馬県産、クロマツは関与先の実家にあった梁を解体した際に頂きました。訪問する度に「いい梁ですね〜」と言い続けたのが良かったのかも?
厚さが100mm以上ある現状のままでは重すぎるため、50mm厚の二つに切りました。樹脂が非常に多く、ベルトサンダーの新品が写真の脚1本でダメになるほど油ギッシュ。太陽に透かすと木目に沿って樹脂がオレンジ色に浮かび、惚れ惚れするほどの美しさ。
大菩薩嶺にある丸川荘の小屋主が、マツを使った透かし彫りのトックリを作るにあたり、古民家の梁の廃材ぐらいしか良い材料が見つからないと嘆いていたことを思い出す。あの透かし彫り、買っておけば良かったかな。自分で作るしかないか。
このすばらしいクロマツを何とか有効利用出来ないものかと模索して数年。新事務所移転に伴い、裁断したりコピーをまとめたり小物をまとめる場所が必要だったため、このクロマツを利用したラックの製作に取りかかりました。ケヤキの天板と古民家で煙にいぶされたクロマツの脚を使っているため、裁断作業で揺れることもなければ歪みもせず、かなり頑丈な作りとなっております。
棚のスギ板は知り合いの製材所の方が、屋根下に使用する曲線を描いた化粧用のスギを選んでくれました。「最近はこういう化粧板を使う家がないんだよね〜」とのことで、使われないでずっと寝かされていたようです。品のあるきれいな木目で、棚板にするにはちょっと贅沢すぎるかも。
さて、このラックを制作して痛感したのが、ムク材にて直角・直線を作り維持することの難しさでしょうか。クロマツは製材後も落ち着いておりましたが、ケヤキとスギは1週間も経てば暴れだし、丸2日かけて直角・直線に仕上げた面は直ぐに歪んできます。直角・直線に費やしたあの2日は何だったのだろうか・・・。今後の課題です。
本棚
近所のジョイフルにて集成材を購入・カットして頂きました。便利な世の中です。
立った状態でも背表紙の文字が分かるようヒナ壇型式にし、これにより地震が発生しても倒れにくい構造にしました。塗装はオイルフィニッシュで窓枠に似た色とすることで事務所内でも違和感なく落ち着いた感じになっております。
写真では分かりづらいですが、所有している本を高さで3つのグループに分け、それら3種がスッポリ収まるよう高さ調整をし、背板も高さに応じて幅が異なっております。そのような無意味ともいえる細かい作りにしてしまったため、設計・製作にまる3日かかってしまいました。
コピー機台
テレビ台として20年近く使用しておりましたが、板の状況も良く木目や形が美しいことから、事務所へ移動となりました。オイルフィニッシュで磨くと赤みが強まり重厚感が出てきます。現在は、コピー機の台として使用。
板は群馬県産のサクラですが、種類は不明。色や形状、大きさからソメイヨシノかオオヤマザクラと思われます。脚は同じ桜の木で統一すべく山からチェーンソーで切ってきたカスミザクラ。樹皮を付けたままにしているため、味のあるテーブルに仕上がりました。
会議室テーブル・成田オフィス
天板は北海道産のカエデ(樹種はエゾイタヤかアカイタヤと思われます)。今回は久々の木工製作ということで福島の製材所まで行って探して来ました。20代の頃から登山の行き帰りに何度か寄ったりしていた製材所でしたので、気後れする事なくのんびりじっくり選ぶ事が出来ました。
現在の事務所にはケヤキ、トチノキ、サクラ、マツ、スギの材を利用したウッドクラフト作品がありますので、違った材としてケヤキ並みに硬さのあるカエデを考えておりました。ちょうど、長さが3m・幅80cmと事務所の寸法にあうカエデの板があり、滅多に市場に出ない国産巨木カエデであることと、磨くと美しい杢が出そうな予感もしたため即購入。実はこれが大正解でして、磨けば磨く程美しい縮み杢・玉杢が出て来てマニア的にはたまならい極上品でした(笑)。
しかし、福島と比べて千葉の湿度は非常に低く乾燥しているため板の反りが激しく、材も相当硬かったため、加工に2ヶ月以上かかってしまいました。年末に差し掛かっていたためかなりのやっつけ仕事で酷いものですが、脚を専門業者の方に頼んだため、バランスの取れた美しいテーブルに仕上がりました。
このテーブルは、成田オフィスの小会議室で使用しております。
会議室テーブル・富里オフィス
こちらは上の3m材を二つに切った一方となりますが、枝部分が空洞となっているのが特徴。ここを欠点と捉え切り捨てるのか、利点と捉え生かすのかは加工する人の感性次第。
辺材には縮み杢、心材には玉杢が出てきてとても美しいです。
このテーブルは、富里オフィスで使用しております。