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消費税免税制度の悪用問題、令和4年度税制改正、インボイス制度

1月末に国税庁課税部法人課税課より、「消費税還付申告に関する国税当局の対応について」として税理士会へ以下の告知依頼がありました。

消費税は、輸出免税や免税店における免税販売が主要な事業である場合、ないしは高額な設備投資を行った場合などに、還付申告書を提出することで還付金を受けることができる仕組みとなっています。
消費税の還付申告の中には各取引に関する課税取引や非課税取引といった区分の誤りや固定資産等の取得時期の誤りなども見受けられます。
このため、国税当局としては、各種情報に照らして必要があると認められる場合は、還付金の支払いをいったん保留しつつ、還付申告の原因を確認するため、行政指導として電話等による確認書類(例えば、還付申告の主な原因が輸出免税である場合には輸出許可通知書やインボイス等の写し、設備投資である場合には契約書や請求書等の写しのほか、取引実態の確認できる資料)の提出をお願いすることや、実地調査を実施する場合もあります。
また、還付申告の原因の確認に当たっては、個別具体的な各種の事情に応じた対応を行うことから、例えば、課税仕入れや免税取引等の相手方と連絡が取れないことなどにより取引の実態の確認が困難である場合や、取引に係る金銭授受の事実確認が困難なである場合、輸出等に係る証拠書類が適切に保管されていない場合などにおいては、それらの確認に時間を要し、還付を保留する期間が長期にわたる場合があります。
国税当局としては、可能な限り速やかに上記の実態の確認等に努めるとともに、これらの結果、還付税額が過大と認められる事由がないことが判明した場合には、遅滞なく還付を行うこととしていますので、納税者の皆様のご理解とご協力をお願いします。
以上の依頼を日本税理士会連合会等にしたようです。

そもそもの発端を探ると、免税店が購入記録やパスポート情報を国税庁に電子送信する免税手続きの電子化が2020年4月から一部開始されたことによります(2021年10月より完全電子化)。従来、免税店には購入記録票の作成や購入者誓約書の保管義務(7年)があり、事務負担と管理コストの増大が問題とされ、外国人旅行者ら非居住者は購入者誓約書の提出と購入記録表の税関への提出が義務付けられ、手続の煩雑化という問題を抱えておりましたが、これら免税品を海外へ持ち込んだと仮装し消費税を不正に還付する者や国内で転売する者が相当数いるとして問題視されていたようです。

大阪国税局がこの電子記録をもとに、大阪市内の百貨店から免税品を大量購入している中国人の税務調査を実施したところ、輸出を証明する書類がなく免税の要件に該当しないとして1,400万円の徴収処分をしました。
また、名古屋国税局においては、中国系の貿易会社らが輸出売上や免税売上と仮装した上に、架空仕入をしていたとして、消費税5億円の課税処分をしました。

大阪国税局や名古屋国税局等において輸出免税制度や免税品を利用した消費税に関する事件が発覚したことにより、全国規模で一斉に消費税還付に係る行政指導又は税務調査が実施され、半年以上の期間にわたり還付が実行されないことによる納税者・税理士とのトラブルを避ける意味から国税庁課税部より周知依頼があったものと思われます。

以上の経緯もあり、令和4年度税制改正大綱において、消費税改正がなされております。
外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)について、次の見直しを行う。
・輸出物品販売場において免税で購入することができる非居住者(以下「免税購入対象者」という。)の範囲について、出入国管理及び難民認定法別表第一の在留資格を持って在留する非居住者については、短期滞在、外交又は公用の在留資格を有する者に限ることとする。
・免税購入対象者が行う旅券情報の提供等は、デジタル庁が整備及び管理をする訪日観光客等手続支援システムを用いて行うことができることとする。
・免税で購入された物品を輸出しない場合に消費税の即時徴収等を行う場合の税関長の権限について、税関官署の長へ委任できることとする(令和4年4月1日以後適用)。

令和4年度税制改正大綱では、外国人旅行者等に向けた消費税免税制度について輸出物品販売場において免税で購入することができる非居住者の範囲として外国人留学生らが除かれ、短期滞在者や外交官などの在留資格を有する者に限定されました。
実行した外国人留学生らに非があるのは当然ですが、営利のみ追求して免税要件の確認を怠った免税店や税関に問題はなかったか?

消費税法は過度な節税対策を防止する改正を上書きし続きてきたため整理の必要はありますが、インボイス制度は様々な分野において存在する「抜け道」なるものを通用しなくさせる可能性を秘めております。
それは盗難や偽装、生物資源保護に関して顕著と言えます。
次回、これらにつき記載していくことに致します。

消費税還付申告に関する国税当局の対応について
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0022001-098.pdf

輸出物品販売場における輸出免税について
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/menzei/201805/0523.htm

令和4年度税制改正大綱
https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/202382_1.pdf

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