事務所便り
房総登山・ユビナガコウモリ・野生イノブタ
房総の山も寒くなりヤマビルの活性が低下したところで、久しぶりに職員とハイキングへ行ってきました。平易なルートを選んだのですが、千葉県を襲った台風による土砂崩れや倒木による爪痕が酷く、ルートファインディングが相当要求されるハイキングとなってしまいました。
倒木は目視で3桁、土砂崩れも多数見られ、1箇所土砂崩れにより砂岩が露出し登山道が消失しておりました。そのため十数年振りにザイルとカラビナ、スリングが出動するなど高巻いて渡らざるを得ませんでしたが、何とか無事に切り抜けることができました。
房総の山に関しては、土砂崩れによりザイルなしに通過できないルートが他にもあると思われますので、最低、上記3つを持参されたほうがよろしいかと思います。
砂岩の上に薄く表土があるだけの尾根のため、倒れる時は脆いといえます。ただ、数が多すぎですね。
手前の砂岩は本来、表土の下にあったもので、下に剥がれ落ちている表土と針葉樹は、今回の台風で落ちたもの。
1m程の細い尾根筋だったのですが、左側に生育していた樹木が倒れて表土全てが剥がれ落ちていました。
尾根筋にあったキョンの足跡。今回も姿は見えませんでしたが、オス鹿の警戒音を聞くことが出来ました。ちなみにキョンの鳴き声は濁った声であるのに対しニホンジカは澄んだ声のため、慣れればすぐに分かります。
杉の木の樹皮が剥がれております。これはニホンリスが巣材として利用するために剥がしたもの。
左側がホンドテン、右側がイノブタ(交雑種)の糞。同じ尾根の岩上にありました。イノブタなのに、糞がイノシシと同じ形状なところが面白いです。
帰りの林道で5頭の「イノブタ」と遭遇しました。個人的には、これを「イノシシ」と呼称するには疑問点が多くて表記することを控えました。耳は大きいし12月なのに顔や頭に長い灰白色の毛が多数残っていて、この時期の子供のイノシシとしてはどうなのか。顔や鼻の形も何だかしっくりきません。何でしょう、このモヤモヤ感。他県の山奥で昔見たイノシシと違うんですよ。ちなみにお尻の毛がまばらで少なく地肌が見えるタイプの子も別所にいました。
ネットでも調べてみましたが、画像も動画も普通にイノシシと書いておりますが、怪しいものも多く本当に遺伝子レベルで純系の在来イノシシなのか?交雑種のイノブタではと感じてしまいます。
さて、今の日本に遺伝子レベルで地域個体群としての純系在来種のニホンイノシシが存在するのか?という疑念が湧いてきますが、全国的に放逐されているため存在は難しいものと思われます。
千葉県は実際どうなのでしょうか?
2006年に調査したイノシシの遺伝解析の論文が発表されており(※1)、mtDNAハプロタイプとして昭和20年代に捕獲した清澄山周辺で捕獲した個体をJ8と判定しております。J8は関東に特徴的なタイプで千葉県の純系イノシシと考えられます。千葉県のイノシシは1970年代に絶滅したと考えられておりますが、1992年~2006年に捕獲した34個体はJ3,J10タイプとしており、元から生息していたとするケースと他地域からのイノシシを放逐したケースが考えられると述べられております。しかし、イノブタか否かの判定に重要となるGPIP遺伝子型の解析がなされておらず、mtDNAハプロタイプのみをもってイノブタが千葉県にいる証拠は見つかっていないとする千葉県の見解は、如何なものか。典型的な役人的発言であり責任逃れと言われても致し方ありませんね(※2)。
ちなみに群馬県の調査(※3)では、GPIP遺伝子解析によりヨーロッパ型対立遺伝子であるGPIP*4が確認され、これを持つオスの家畜ブタやイノブタ、イノシシとメスのニホンイノシシ間で交雑した可能性を示唆していることから、千葉県においても群馬県と同様の状況が予想されます。予算の都合もあるのでしょうが、早急に調査して頂きたいものです。
※1永田純子、落合啓二「千葉県における昭和20年代のイノシシ頭骨をもちいた遺伝解析:近年のイノシシ個体群との比較」2009年
※2千葉県野生鳥獣対策本部「千葉県イノシシ対策マニュアル」2012年
※3高橋遼平、石黒直隆、姉崎智子、本郷一美「群馬県に生息するニホンイノシシのDNA解析」2011年
久しぶりに綺麗に黄葉したイタヤカエデを見ることが出来ました。太陽もいい角度で照らしてくれていますね。
ユビナガコウモリ。トンネルを歩いていたら、大群が越冬していました。職員は奇声を上げて逃げて行きましたが、私はニヤつきながら連写!連写!
まだ冬眠には早いのか、ライトを当てるとモゾモゾ動き出します。年初のキクガシラコウモリは1月で気温マイナス6度だったためか、全く動きませんでしたが、今回はまだ16度。
滅多に見られないコウモリの越冬地を見ることが出来て一人で感動していたのですが、みんなにコウモリの話を熱く語っても誰も聞いてくれません。悲しい。
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